2012/02/26

ITストラテジストの論文対策 Part 1


ITストラテジスト試験の一番の課題はなんと言っても午後IIの論文対策の試験でしょう。大問題3つから1問選択式で、小問は3つ。最低でも2400字程度の作文が求められるので、試験には事前に練習をして望みましょう。



■論文の分野
過去問を参照すると、大きく4つの論文分野がありますので、それぞれ対策することになります。

・全体システム戦略
経営戦略に基づきその企業全体の情報システム導入の企画、立案を行うもの

・個別システム戦略
経営戦略に基づき特定の情報システムの導入の企画、立案を行うもの

・情報システムの利活用の促進
既に導入済みの情報システムの利用が芳しくなく、利用促進のための企画立案を行うもの

・組込システム
カーナビなどの組込向け機器システムの企画立案を行うもの


旧システムアナリスト試験+旧上級シスアド試験がそのまま残っているイメージですね。この中で「組込システム」はこの数年必ず出題されています。もし組込システムの分野に詳しければ、取り組む価値はあると思います。組込システムの経験がないのであれば、残りの分野を中心に取り組みましょう。


■出題のポイント
論文問題は毎年少しずつ出題のポイントが変わっています。平成23年度のITストラテジスト試験午後2を見てください。
http://www.jitec.ipa.go.jp/1_04hanni_sukiru/mondai_kaitou_2011h23_2/2011h23a_st_pm2_qs.pdf

この中でいくつかのポイントをピックアップしていきます。
「事業の急激な変化」「あなたが考慮した強い制約条件」「事業の特性」

情報システムの変更(すなわち投資)には企業の戦略が背景にあり、それには市場環境などの外的環境の変化が必ずあります。特にこの数年のITストラテジスト試験の問題を見ていると、「個別システム戦略」「全体システム戦略」問わず、「事業の急激な変化」がよく出てくるトピックとなっています。

初めての論文試験に臨まれると、「そんな事業の急激な変化ってないよ」と思われるかもしれません。しかし、日常的に日本経済新聞などの記事を想像してみてください。自分が実際に携わったのかは関係ありません。
例えば、「消費税導入/増税」「IFRS導入」による会計制度の変更、「企業買収」によるシステム統合整理、「関連法律の改正」による新たな規制への対応、円高など理由による「企業の海外進出」、食の安全への関心の高まりから「食品のトレーサビリティ」などです。少し思いついてきませんか?


■技術面での考察
ITストラテジスト試験は、情報処理「技術者」試験になるので、技術面でも新しいトピックを取り組むことで論文に対する心証を良くすることが出来ると思われます。特に他の高度計情報処理技術者試験でも扱われることがでてきた「クラウド」「仮想化」の要素は押さえるべきです。それらの要素は自社開発のシステムやパッケージソフト、自社データセンタなどと比べて何がメリットなのかを整理して、いいところを盛り込んだシステム戦略の策定を準備するべきでしょう。


■論文を書く立場
ITストラテジストなので、ITストラテジストの立場での論述が求められます。SEの立場の論述では不合格です。
IPAではITストラテジストは以下のように定義をしています。(抜粋)

企業の経営戦略に基づいて,ビジネス
モデルや企業活動における特定のプロセスについて,情報技術を活用して改革・高度
化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する


「ITストラテジスト」になりきることがスタートです。

ポイント1は「基本戦略を策定・提案・推進する」ところです。ITストラテジストはプロマネではないので、自分でプロジェクト管理は行いません。「経営戦略」に基づいて「方針を策定する」ことを意識しましょう。

ポイント2は「論述者の立場」です。ITストラテジストは戦略を策定する責任者です。責任者の視点を意識しましょう。


参考までに、私が論文を書くときには自分の立場を「経営企画部の責任者」もしくは「経営改革プロジェクトチームのリーダ」としています。



■平成24年度試験でのネタ帳
普段から世の中で起こっていることに注目することが第一歩です。新聞などはよいコンテンツです。
「日経情報ストラテジ」などの雑誌の記事もネタ収集にはばっちりです。さっと目を通すだけでかまわないので、図書館などを利用するのがよいでしょう。


私が時事ネタでつかえそうなことを考えてみました。


原子力発電所事故による放射性物質の放出が大きな社会問題となっています。それに呼応して、食品への安全性への消費者の関心が高まっています。食品会社では出荷時に新たに「放射性物質検査」を実施していると思われます。同時に、万が一出荷した製品に規制値以上の放射性物質が検出されたときには、販売停止を速やかに行うために、出荷した食品がどの流通経路を通ってどの小売店で販売をされたのかをトレースする必要があります。生産管理システムや出荷管理、放射性物質の検査、ロット番号の管理はもちろん、既存のシステムの改修orリプレース、など課題は色々ありそうです。
企業の存続にも関わることですから、のんびりと対策はできません。「事業の急激な変化」になります。


急激な円高にともない輸出企業は工場を海外に持っていく動きを加速しています。当然海外に工場をもっていくことになるので、生産管理や在庫管理、販売管理などのコアな機能を新たに海外でも展開することになります。人事・給与システムなどのシステムも順を追って導入する必要がでてくるでしょう。
現地工場では日本語を使えない従業員もいるでしょうし、現地の商習慣、通貨、言語が今使っているシステムでは利用できないかもしれません。時差もあるので、同じ12時でも異なる時間になります。
海外進出は売り上げの維持向上が目的なので、のんびりしていられません。「事業の急激な変化」そのものです。


工場の海外進出では、他にも以下のようなことが考えられますね。
東日本大震災やタイの洪水の教訓として、工場や部品をつくっている工場が特定のエリアに集中していると、被災していないエリアであっても工場での生産に支障を来すことが問題になりました。また日本では電力供給が特に夏場は慢性的に不足し、生産ラインが停止となることもありました。
そのため、どんなときでも企業活動を継続していくのかが注目されました。これは「BCP対策」でもあり「事業の急激な変化」といえるでしょう。



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